理事長挨拶

理事長
一般社団法人 日本顎関節学会
理事長 近藤壽郎

このたび、古谷野 潔前理事長の後任として、理事長を務めさせていただくこととなりました。なにとぞよろしくお願い申し上げます。ご挨拶に代えて私が思うところの、本学会の方向性などについて少しだけ述べさせていただきます。

国立社会保障・人口問題研究所による平成29年度版「日本の将来推計人口」という報告書によりますと、その序文において「わが国は現在、人口減少社会への道を緩やかに歩み出したところであるが、今後は加速的な人口減少と世界に類を見ない高齢化という事態に直面して行く」と記されています。興味深いのは、生産年齢(15~64歳)人口の推移です。生産年齢人口は戦後一貫して増加を続け、1995年で8,726万人となりその後減少し、2015年では7,728万人、2040年には6,000万人へと減少すると推計されています。老年(65歳以上)人口は2015年での3,387万人から、2042年には3,935万人へと増加すると推計されています。過去にこのような人口構造の著しい変化を経験したことのある国は世界にありません。また今後もありません(中国を除いて)。要するに世界に前例を求めることができないのです。

日本の人口推移というマクロな数字からも、顎関節症をはじめとする顎関節疾患の様相も今後変化するであろうことが想像できます。顎関節症が生産年齢層の病気だということを念頭に置けば、今後その患者数の減少が推察され、認知症者の習慣性脱臼をはじめとする老年者の顎関節疾患が相対的に増加する可能性があります。10年後、25年後において、社会から求められる顎関節疾患医療の主体が、現在のような顎関節症治療であるという保障はありません。

本学会には、社会の高齢化に伴う顎関節疾患の構成の変化にかかわる疫学的研究、加齢に伴う口腔機能低下(フレイル)の主要部分となりうる顎機能低下に関する研究、認知症者の顎関節脱臼の管理、高齢者の変形性関節症治療に関する基礎的ならびに臨床的研究など、取り組むべき課題がたくさんあります。超高齢社会における顎口腔機能の加齢変化の探究は、顎関節学会が学際的に取り組むべき新たな地平であり、国際的視点からも日本ならではの研究領域となる可能性があります。

以上のように、今後、顎関節学会がやるべき仕事は多岐にわたって盛りだくさんといえます。マンパワーが必要です。若き人材の確保を学会として工夫しなくてはなりません。まずは卒前教育のなかに、顎関節症やその他の顎・咀嚼器に関連する疾患に対する系統的な診断治療体系について、質の高い教育を施すための全国標準カリキュラムを策定する必要があります。本学会が積極的に教育の標準化に取り組むことによって、日本中の歯育機関から、「顎関節学」ともいうべきわれわれの学際領域に関心を抱く学徒が多く輩出され、将来の本学会を支える若手会員に育ってくれることが実現できれば最善と思います。

さらに本学会のマンパワーの増強には、専門医制度の整備が必須と考える次第です。本年度新設されました日本歯科専門医機構との十分な協議のうえ、適切な標榜専門医の獲得を目指したいと思います。

冗長な私見を述べましたが、まとめますと「日本社会の超高齢化に伴う顎関節疾患の変化への対応」、「標準的な卒前学生教育への本学会の関与」および「本学会の標榜専門医の獲得」を柱として、若手歯科医師の本学会への入会促進、会員増による経済的運営の改善を図るという基本目標を掲げたいと考えています。

最後になりますが、日本顎関節学会は歯科関係学会のなかでは、30年の歴史を有する学際学会として、2000名を超える会員を擁しております。今後の発展の伸びしろは十分にあります。歴代理事長はじめ諸先輩のご努力と重ねられたご業績を玩味し、最大の敬意を払いつつ2年間の理事長任期の間、本学会の発展にわずかでも寄与できますよう努める所存です。本学会会員ならびにご関係の皆様のご協力、ご指導ならびにご叱正のほどよろしくお願いいたします。