解剖学は生体の構造や機能を理解する学問であり、医学・歯科医学を志す者が最初に学ぶ分野です。また、基礎系だけでなく多くの臨床分野と高い関連性をもつことから、「医学の基礎」ともいわれています。すなわち、解剖学を深く理解することで、病気の診断や手術において適切な処置を可能にします。
解剖学は、肉眼解剖学と顕微解剖学の二つに大別されます。肉眼解剖学は、体表をはじめ、骨、筋、血管、神経、内臓などを肉眼で剖出し、それぞれの位置や形態を観察・評価する分野です。一方、顕微解剖学は、生体から摘出した組織を薄切し、顕微鏡を用いて微細構造や細胞を観察・評価する分野です。近年では、技術の進展に伴い、新たな顕微鏡が開発され、生体の深部組織における分子レベルの情報を取得することが可能となっています。さらに、人体のみならず、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類などの動物間における形態や機能の違いを理解する比較解剖学も解剖学の一つに位置づけられています。
解剖学の研究は、主に肉眼解剖学を基盤として行われますが、より高度な研究を遂行するために、他の基礎分野および臨床分野とも連携して進められています。また、歯科基礎医学における多くの研究は、正常な形態と機能を基準としているため、解剖学の知識が不可欠です。近年、主流となっている遺伝子改変動物を用いた研究では、表現型が評価対象となることが多く、特定の遺伝子変異による病態変化から、関連分子・遺伝子の発現、さらにはそのシグナル伝達などが解析されています。これらのことから、個々の研究は多くの分野の連携によって成り立っていることがわかります。すなわち、解剖学の研究は分野の垣根を越えて相互に連携しあうことで、その研究目的を達成するものといえます。
歯科基礎医学会の解剖学分野では、生体の正常構造や機能の理解を深め、いかなる状況でも適切に対応できる歯科医師の育成に貢献しています。さらに、日々の研究を通じて、口腔機能はもとより全身の機能維持に関する新たな知見を社会に還元することで、国民の健康増進に寄与しています。