臨床・再生医学分野

分野の概要

臨床・再生医学分野は、歯科基礎医学会の中で、臨床現場の課題を基礎医学の視点から解明し、社会実装につながる新たな医療技術を創出することを目的とした領域です。

再生医学は、失われた組織や機能の回復を目指す学問であり、細胞生物学・分子生物学・材料工学・臨床医学など多様な分野が連携して発展してきました。従来の「病気を治す」医療に加えて、「組織そのものを再構築する」という治療概念を取り入れることで、歯科医療の未来を大きく変える可能性を秘めています。口腔領域は、硬組織(歯・歯根膜・歯槽骨)と軟組織(歯肉・粘膜・唾液腺)が複雑に協調して機能する特異な部位であり、再生医学の研究対象として極めて魅力的です。歯髄再生、歯周組織再生、顎骨再建、唾液腺機能回復など臨床的ニーズの高いテーマが多く、幹細胞、成長因子、遺伝子治療、生体材料など多様なアプローチが用いられています。

一方、臨床医学としての歯科医療では、高齢化に伴う口腔機能低下症、難治性疾患、医科歯科連携を要する全身疾患など、複雑で多面的な課題が顕在化しています。これらは臨床技術の改善だけでは解決できず、基礎医学的解析によって病態の本質を理解し、科学的根拠に基づく診断・治療体系を再構築することが求められています。本分野は、こうした臨床課題を基礎研究の手法で再解釈し、臨床研究と基礎研究を往還させながら社会実装を目指す点に大きな特徴があります。

再生医学や臨床研究の基礎を学ぶことは、将来の歯科医師・歯科医学研究者が新しい治療法を正しく理解し、安全に応用するための重要な基盤となります。近年は、大学・研究機関・医療現場が連携し、基礎研究から臨床応用まで幅広いステージで研究が進められています。細胞・組織の成り立ち、再生医療の倫理、安全性評価、臨床研究の進め方など、医療者として不可欠な視点を育むことも本分野の重要な役割です。

さらに、再生医療に加えて、臨床データベース研究、AI解析、他分野との連携研究など、社会実装を見据えた研究も活発に行われています。インプラント周囲炎の難治化機序、口腔がんの微小環境、顎関節症の疼痛発生メカニズム、摂食嚥下障害の神経筋制御など、臨床現場の課題を基礎医学的に解き明かす研究は、歯科基礎医学会ならではの価値を生み出しています。

臨床・再生医学分野は、歯科基礎医学の一領域として、他分野と協力しながら口腔医療の新たな地平を切り開くべく、教育・研究の両面で貢献してまいります。