日本バイオマテリアル学会

会長挨拶

「日本バイオマテリアル学会のご紹介」

第23期日本バイオマテリアル学会会長
国立循環器病研究センター研究所 生体医工学部 部長
山岡哲二

山岡哲二

本会は生体に使用する材料(バイオマテリアル)およびその応用に関する科学、技術を発展、向上させることを目的とし1978年に設立されました。かつてバイオマテリアル(biomaterials)は、“a nonviable material used in a medical device, intended to interact with biological systems” と定義され、金属、セラミックス、合成高分子、生体由来材料を駆使した人工心臓や人工関節などの医療機器、および、ドラッグデリバリーシステムに於ける薬物キャリアなど多くの成果を輩出して参りました。近年、生きた細胞や組織を”マテリアル”として用いる再生医療研究が急速に進歩し、日本バイオマテリアル学会は、さらに広範な学際領域へと成長を続けております。

バイオマテリアル学会には、図に示したような様々な分野・領域で活躍する約1400人の会員が所属しています。生きた細胞や組織も含めた広義のバイオマテリアルの特性を解析し、医療におけるPOC(Proof of Concept)を確立する基礎研究者、デバイス化や製品化を進める企業研究者、そして医歯薬系臨床家が多く所属しています。もう一つ重要な分野として、安全な医療を提供するために不可欠なレギュラトリーサイエンスがあります。現在、新型コロナウィルスワクチンの安全性に関心が集まっていますが、身近なかぜ薬や絆創膏やコンタクトレンズなども同じように安全性を担保することが大切で、これを専門とする科学者が所属しています。これらの異分野研究の協力により、優れた医薬品・医療機器・再生医療等製品を世に送り出すことが当学会の使命です。

図1

日本バイオマテリアル学会は、毎年、約1000人が参加する学会大会を開催しています。2021年は、名古屋国際会議場において、アジアバイオマテリアル学会(ABMC)とジョイントで開催致しました。新型コロナウィルスの影響で、海外研究者の来日は叶わずハイブリッド開催となりましたが、対面およびオンラインでの活発な討議は、2024年に韓国で開催される世界バイオマテリアル学会大会(WBC2024)に向けての弾みとなりました。さらに2020年にホノルルでの開催を予定していた日米バイオマテリアル学会ジョイントシンポジウムも2022年1月にハイブリッドで開催し、多くの米国研究者には現地参加していただけました。今後の学会大会は、2022年11月21-22日に東京都、2023年に大阪市、2024年に仙台市おいて開催予定です。可能な限り対面での開催に向けて準備を進めて参りますので、是非ご参加下さい。

その他、本学会では特定のテーマに焦点を当てた講演会やセミナー、また、北海道・東北・北信越・関東・中部・関西・中四国・九州各ブロックの講演会活動、年4回発行している学会和文誌「生体材料」および、英文誌「Journal of Biomedical Materials Research A/B (Wiley社)」を通して、全国の大学、国公立研究機関、企業などに所属する会員諸氏が積極的に情報交換できる場を提供し、さらには、産業界との協力のもと、研究成果を社会に還元することを目指しています。癌にだけ効く薬剤、ECMOのような臓器代替医療機器、iPS細胞などを利用した再生医療など、材料を用いた新しい医療の創出に興味をお持ちの研究者、技術者、臨床家、学生諸氏、あるいは参入を計画しているベンチャー起業家の方々など、是非、当学会にコンタクト頂きたくお待ちしております。