大会長挨拶
大会長 古谷野潔 九州大学大学院歯学研究院 口腔機能修復学講座 インプラント・義歯補綴学分野
第29回日本顎関節学会総会・学術大会の開催にあたって
このたび、第29回日本顎関節学会総会・学術大会を担当することになりました。期日は2016年7月17日(日),18日(月祝)で、会場は神奈川県箱根湯本富士屋ホテルです。顎関節学会の開催日は7月が恒例で、いつも暑い思い出があります。そこで、会員の皆様に少しでも涼しさを味わっていただけるよう、今回リゾート地で学術大会を開催することにしました。火山活動が活発化しているとメディアが報道していますが、湯本はテレビ等でお馴染みの大涌谷から8キロ以上離れた箱根山の麓ですので、全く心配はありません。学術大会で十分議論を重ねたあとは、箱根の温泉と景色を存分に堪能していただきたいと思います。
今回のテーマは、「日本の顎関節症治療を変える―臨床研究と科学の調和をめざして―」としました。未だに顎関節症の診断は難しく、症状に見合った適切な治療がわからないという話をよく耳にします。これは、科学的根拠のもとに顎関節症の診断・治療がなされていないことを裏付けています。学会では、従来のI型~V型の症型分類について、現在世界中で標準化が進んでいるDC/TMD分類と整合性をもたせた顎関節症診断基準の改訂を行い、2013年7月に公表しました。そこで、今回3年前に改訂した新診断基準の実施状況と検証をメインシンポジウムに取り上げました。さらに、前回の名古屋での学術大会で、DC/TMD分類の診断法についてシンポジウム、ハンズオンセミナー等で紹介しましたが、今回、DC/TMDコンソーシアムのメンバーであるスウェーデンのPer Alstergren教授をお招きし、DC/TMDの最新情報について話して頂くことにしました。さらに、新診断基準では、これまでと何がどのように変わったのかを再度会員の皆様に周知し、日本中の顎関節治療に関わる先生が、研究結果の定量化や研究者間での比較を出来るよう図るために、診断法や問診法についてのハンズオンセミナーを企画しました。
すでに学会では、顎関節症治療にあたり、患者と医療者の判断を科学的な根拠をもって支援する目的で、顎関節症治療についてランダム化比較試験などを行った信頼性の高い論文を検索し、推奨の程度(GRADE 評価)を検証した顎関節症患者向け初期診療ガイドラインを作成し、一般臨床医にも利用してもらっています。教育講演では、このことも踏まえて、顎関節症治療のエキスパートによる顎関節症標準治療についてお話しいただきます。また、名古屋で開催された前回プログラムに続いて、高齢化社会となり増加傾向にある顎関節脱臼を取り上げ、その神経学的メカニズムに基づいた顎関節脱臼の治療戦略をシンポジウムの一つとして企画しています。
会員懇親会は7月17日に学会会場で開催を予定しています。盛り沢山のプログラム内容ですが、懇親会の後は、ゆっくり箱根の温泉に浸かって日ごろの疲れを癒して下さい。本学会に参加いただく皆様に有意義な学術大会となるように最善を尽くしますので、多くの方々が参加されますようにお願いいたします。