局所麻酔
Q1 |
歯科で使うのは注射の麻酔だけですか。 |
A1 |
痛みを取り除くことを目的として局所に麻酔薬を注射する局所麻酔が一般的ですが、局所麻酔以外にも全身麻酔や歯科治療時の不安や緊張を軽減するために適用される静脈内鎮静法などにも用いられています。(静脈内鎮静法については、Q&A10「精神鎮静法とはどのようなものですか?」もご参照ください) |
Q2 |
麻酔注射で針を刺す時が痛くて嫌なのですが。 |
A2 |
針を刺す時の痛みを軽減する方法があります。針を刺す部位に局所麻酔薬の含まれたゼリーや軟膏などを塗る方法、すなわち表面麻酔法が一般的ですが、担当の歯科医師にご相談ください。 |
Q3 |
歯科治療の時に麻酔をしたのに痛くて、麻酔の効きにくい体質と言われたのですが。 |
A3 |
患者さんの体質により局所麻酔薬の効果が影響を受けることはありません。しかし、歯や歯肉(歯ぐき)の周囲に強い炎症がある場合、骨が固く麻酔の注射が浸透しにくい部位、下の奥歯、膿が溜まっている部位などでは、局所麻酔薬の効果が十分に得られない場合があります。また、治療中に痛みを繰り返したり、緊張が強い場合などでも痛みに対し過敏となり、局所麻酔効果が得られにくくなることがあります。 |
Q4 |
以前局所麻酔薬にアレルギーがあると言われたことがあります。麻酔の注射が心配なのですが。 |
A4 |
歯科治療時に使用される局所麻酔薬による重症のアレルギー(アナフィラキシーショック)の発生頻度は極めて低いとされています。局所麻酔薬アレルギーと診断されている方は、局所麻酔時の血管迷走神経反射(脳貧血)や過換気症候群などで気分が悪くなった症状をアレルギーだと誤診されていることが多いため,本当に局所麻酔薬アレルギーであるか鑑別が必要です。歯科麻酔科医にご相談ください。 |
Q5 |
以前麻酔の注射をうった後、気分が悪くなったのですが。 |
A5 |
局所麻酔後の気分不快には、いくつかの原因があります。例えば、針を刺した時の痛みによるものや、注射時に感じた恐怖心によるものなどが挙げられます。その他、非常に稀ですが麻酔薬に対する過敏症(アレルギー)も考えられます。これについてはQ&A4もご参照ください。また、麻酔の注射に対する強い恐怖により気分が悪くなる場合は精神鎮静法なども有効です。大学病院などで、歯科麻酔科医にご相談ください。 |
Q6 |
お酒を飲む人は麻酔が効きにくいですか? |
A6 |
お酒をたくさん飲む方に全身麻酔が効きにくくなることは通常はありませんが、効きにくくなる場合もあります。下記、日本麻酔科学会のホームページもご参照ください(わかりやすくクイズ形式で解説されています)。
http://masuikai.info/quiz/03/ |
全身麻酔
Q7 |
全身麻酔は危なくないのですか。 |
A7 |
全身麻酔による合併症は,患者の皆様の状態を考慮し,細心の注意を払って麻酔することで予防できると考えられます。もちろん医療行為である以上、100%安全な麻酔は存在しません。しかし近年の医療技術の進歩により,全身麻酔を原因とした死亡率は大きく低下(1~20万人に1人)しており,とても安全になっています。 |
Q8 |
歯の治療を受けるのが不安です。眠っている間に治療をして欲しいのですが。 |
A8 |
大学病院などで全身麻酔や鎮静法(薬物を用いてリラックスしたり半分眠った状態にすること、Q&A10~12をご参照ください)を併用した歯科治療を受けることができます。ただし、患者さんの全身状態や治療内容などを勘案した上で麻酔法を決める必要があります。大学病院などで、歯科麻酔科医にご相談ください。 |
Q9 |
全身麻酔と精神鎮静法は違うのですか。 |
A9 |
全身麻酔と精神鎮静法は異なります。精神鎮静法は、鎮静剤などの効果により不安や緊張が和らぎ、何も刺激のないときにはうとうととした状態となります。意識や記憶がまったくない全身麻酔とは異なる方法です。 |
精神鎮静法
Q10 |
精神鎮静法とはどのようなものですか。 |
A10 |
精神鎮静法とは、名称の通り「鎮静(リラックス)」を得る方法です。歯科治療中の緊張や恐怖心を和らげることを目的としています。また、リラックスすることで、血圧や脈拍なども安定するため、心臓病などの全身的な病気のある患者さんの歯科治療にも適しています。 |
Q11 |
精神鎮静法の方法を教えてください。 |
A11 |
精神鎮静法は薬剤の投与経路によって、鎮静剤などを静脈内に投与する「静脈内鎮静法」と、亜酸化窒素(笑気)というガス麻酔薬を吸入する「吸入鎮静法」に主に分類されます。その他、薬剤を飲む方法などもがあります。詳しくはお近くの歯科麻酔科医へお尋ねください。 |
Q12 |
精神鎮静法は健康保険がききますか? |
A12 |
精神鎮静法には笑気吸入鎮静法、静脈内鎮静法の二つがありますが、どちらも健康保険の適応になっています。患者さんの自己負担額は保険の種類、治療内容や用いる薬剤などにより異なりますので、主治医の先生に事前におたずねになることをお勧めします。 |
その他
Q13 |
口の中を触られると、すぐに吐き気を催してしまって歯科治療が受けられません。 |
A13 |
通常の場合でも人間はのどの奥にものが入ると吐き気を催します(いわゆる嘔吐反射、正確には異常絞扼反射、といいます)。この反射の強い方は、その症状が非常に強く出てしまい口腔内をさわられるだけで反射がでてしまうこともあります。原因は生理的な反射や心理的な要因などさまざまですが、歯科治療を通常通り行うことは困難です。まず、かかりつけ歯科医師に嘔吐反射があることを伝え、嘔吐反射の程度や必要な治療方針などを相談してみて下さい。その結果、かかりつけ医での治療が難しい場合には、大学病院などで歯科麻酔科医による静脈内鎮静法や全身麻酔を併用した治療が必要になる場合もあります。 |
Q14 |
歯科の麻酔には、血圧を上げる成分が含まれていて危険だと聞いたのですが。 |
A14 |
日本で使われる局所麻酔の大部分には、血圧を上げる成分(血管収縮薬)が添加されています。血管収縮薬を加える目的は麻酔効果を強くし、作用時間を延ばすためです。歯科用局所麻酔薬に添加されている血管収縮薬の添加量は少ないため、健康な人にはほぼ無害と考えられていますが、心臓病や高血圧の既往のある方は、必ず治療前にお知らせください。 |
Q15 |
心臓病の患者です。歯科治療を受けても安全ですか。 |
A15 |
軽い心臓病であれば、問題になることはあまりありません。ただし、詳しい病状や内服薬などの情報を歯科医師にお知らせください。歯科医院での治療内容やお体の状態などにより専門機関での治療をおすすめする場合もあります。 |
Q16 |
歯科麻酔の専門医を受診したいのですが、どうすれば良いですか? |
A16 |
歯科麻酔専門医は、日本歯科麻酔学会のホームページにて公開されています。
下記をご覧ください。
歯科麻酔専門医一覧 |
Q17 |
かかりつけの歯科医院では、血圧計などをつけて治療をしますが、大げさすぎませんか。 |
A17 |
血圧や脈拍を測りながら治療することを「モニタリング」と呼んでいます。高血圧や心臓病の患者さんでは、歯科治療時に血圧や脈拍が大きく変動することがあります。この変動を知り危険な状態に陥るのを防ぐのは治療を安全に行う上で極めて重要であることがわかっています。日本歯科麻酔学会では、合併症を持っている方の歯科治療時には各種のモニターを使用することを推奨しています。 |
Q18 |
内科の先生から血液が固まりにくくする薬をもらっていますが、歯科治療は可能ですか? |
A18 |
血液が固まりにくくする薬を服用されている場合でも、適切な止血処置をすることでほとんどの歯科治療が可能です。自己判断で勝手に薬の服用を止めてしまうと、血液が固まりやすくなり、かえって体や全身疾患にとって不都合となることがあります。また、服用されて薬の種類や量、歯科治療の内容、血液検査結果などによってもそれぞれ対応が異なりますので、歯科治療時の服薬に関しては必ず歯科医師や主治医にご相談下さい。 |
なお文中にたびたび「(お近くの)歯科麻酔科医にご相談ください」などの記述があります。
本学会が認定した歯科麻酔専門医、学会認定医、登録医あるいは認定歯科衛生士については、学会HPの下記にて連絡が可能です(認定医、登録医、認定歯科衛生士については、本人が氏名と所在都道府県のHP上での公開を承諾した方々のみ)。